
「G」の脅威と歴史
昆虫界の嫌われ者
カサカサッ
この擬音だけでも生理的な拒否反応を示す人が一定数いるのではないでしょうか。それほどまでに、私たちはゴキブリに対して恐怖している訳ですが、よく考えてみるとその身体のつくりはカブトムシやクワガタ、コオロギといった人気の昆虫とほぼ同じです。
では、私たちはいったいゴキブリの何に対して恐怖しているのでしょうか?
俊敏性
言わずもがな、ヤツらは速いです。ただでさえ何か速いものが自分に向かって飛んでくるというのは怖いものなのに、あの大きさの虫が向かってくるのはむしろ怖くて当然です。
しかも、ヤツらの速さは秒速およそ2m、仮に人間サイズに換算した場合時速300kmととんでもない速さです。さらにその反応速度も抜きんでていて一瞬で最高速度に到達することができます。
感情が読めない、次の行動が予測できないといった要因はしばしば恐怖の要因となりますが、Gにおいても「次何をするか予測できないヤツが」「急に」「トップスピードで突っ込んでくる」という点で恐怖を覚える要素満載といえるでしょう。
都市化
そんなGですが、意外と森などで見かけるとそこまで嫌悪感は感じないものです。私もこの前大学構内(屋外)で遭遇しましたが、珍しかったので記念に写真を撮って友人に送っておきました。
要するに、家の中で見かけるから嫌なのです。このような虫嫌い(Gに限らず)は特に先進国や都市部で多く見られます。都市化によって屋内で虫を見る機会が増えたということは虫との接触機会増加による感染症リスク等の上昇と同義であり、忌避する感情が増幅されたと考えられます。
また、現代人は虫と関わる機会がそもそも少ないため、虫の種類の判別がつかなくなってきています。結果として、益虫・害虫のくくりに関係なく、「虫は敵」とみなす人が増えているのです。Gもそのあおりをくらって嫌悪感が上昇しているといえます。
遺伝子レベルでの恐怖?
ゴキブリの種としての完成度はかなりのものです。その歴史は人間よりもはるかに長く、3億年も前から姿を変えずに現在まで繁栄し続けています。
生息域は街や森、水生の個体もいるなど何でもアリ、食料に関しても雑食なので肉、草、何なら腐っていても平気とここも何でもアリの状態です。
人間は奴らを排除しようと殺虫剤入りのエサを撒いたりしますが、薬剤耐性を獲得したスーパーゴキブリなんて個体が出現するなどその対応力も一流です。
現在地球上におよそ1兆5千億匹。はるか昔には昆虫全体の40%の数をゴキブリが占めていたという歴史もあります。人間よりもはるかに優れたその種としての強さに、どこか恐怖を感じてしまっているのかもしれません。
ちなみにゴキブリの祖先には体長が1mを超えるものもおり、人間の祖先を食べていたのではないか?という説もあったりします。
おまけ
そんな嫌われ者・ゴキブリですが、歴史的にみると意外と嫌われていない場合もあります。
日本でも、大正時代ごろゴキブリは「こがねむし」と呼ばれており、現れると金が貯まる縁起物とされていたようです(金持ちの家には食料と温暖な環境が整備されていたためゴキブリが生息しやすかったようです)。
また、世界各国で食用として食べられてきた歴史もあります。他の昆虫食と同様、味はエビに近いようです。料理としてはフライや塩焼きが主流なようですが18世紀イギリスではゴキブリのジャムも食べられていたようです。
おわりに
清潔・毒餌などによる予防はもちろんですが、家にもしGが出てしまった場合は殺虫剤、洗剤、熱湯などで駆除が可能です。叩き潰すのはGが運んでいる病原体を撒き散らすことになってしまうのでお勧めできません。
また、遭遇もそこそこ珍しいこの時代、親がGを怖がることで子供にも「Gは怖いものだ」と刷り込まれてしまいます。そのため親側には毅然とした対応が求められます。
ここまで、人間がゴキブリを嫌う理由について書いてきました。なんとなく怖い、という状態から、少しでもヤツらに立ち向かう勇気を与えられていたら幸いです。
ありがとうございました。

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