
科学の小ネタ集(理系ネタ)
本記事では、科学に関係する雑学ネタを紹介したいと思います。
ぜひ、科学に興味を持っていただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。
理論と現実
突然ですが、みなさんは教科書に書かれていることが、どの程度現実世界に適用できるか考えたことがありますか。
科学の魅力のひとつは、「世界の複雑なふるまいを、数式や原理によってシンプルに記述できる」という点にあるといって良いでしょう。実際、これまでの人類の研究や実験によって、かなりいろいろなことがわかってきており、様々なもの(スマホ、自動車、飛行機、潜水艦などなど…)を生み出してきました。
一方、そういった理論がどの程度現実世界で使えるのかは、意外と難しいところがあります。ここでは、とりあえず科学の中でも根幹をなす、物理学に関して考えてみましょう。
運動方程式
物理学の中で最も有名で、基本的な式は、運動方程式 であると思います。この式は、物理学において、運動の従う法則を数式に表したもの非常に基本的な式です。なお、は質量()、は質量()、は力()のことを表します。
(余談ですが、の原理というものが成り立つことを認めてあげると、運動方程式は導出することができます。の原理は、「ある物理系の運動は、始点と終点が固定されたときに作用Sが極値となるような経路で決まる」という原理です。この原理から、有名な屈折の法則も導くことができます。実は証明できる方程式や法則は存在しています。証明できないものも当然たくさんありますが…)
運動方程式を眺めていると、ベクトルは入ってはいますが、ただのかけ算であることがわかります。一見すると、簡単に計算できそうです。しかし、よくよく考えてみると、一般的に物体は大きさを持ち、回転したりしています。また、空気抵抗や風などの影響もうけるでしょう。例えば、「斜め上方向にボールを投げると、放物線を描いて落ちる」のは有名な事実だと思いますが、卓球ボールははたしてそうなるでしょうか。プロ同士の試合を見ていれば分かりますが、めちゃくちゃ回転がかかることにより、軌道は曲がったりします。もはや、ただのかけ算だけでは到底予測できないでしょう。
現実の理想化
先述の運動方程式の例のように、実は物理学に限らず、科学における理論というものは、現実を正確に再現するものではありません。むしろ逆に、「現実を一部無視してでも、最も本質的な関係だけを取り出す」ための理想化されたモデルです。
例えば、みなさんが物理の授業で習う「斜面を滑り落ちる物体」の例では、次のような仮定がされていることが多いです:
- 物体は点(質点)である
- 摩擦は無視されている
- 空気抵抗もない
- 斜面は完全に滑らかで硬い
実際はまったくそんなことありませんよね。大きさのないボールなんてありませんし、摩擦が完全にないツルツルな面は存在しません。空気抵抗は空気を抜いて、真空にすれば可能ではありますが。そうであっても、なおこのモデルは役に立つのです。なぜでしょうか?
理論モデル
例えば、我々がどこかに電車で行こうと思った場合、余裕は見ると思いますが、大幅にダイヤが乱れることまでは想定しないと思います。これは、「可能性としてはありえるけど、確率は低いから考えないようにする(無視する)」からだと思います。実際、それでよほどのことがない限りは問題ないでしょう。すなわち、
科学の世界もこれと同じで、目的に応じて無視しても影響が小さいことに関しては無視しています。これは「手抜き」ではなく、合理的な選択です。必要な精度で予測ができるならば、それは理論として使えるモデルだということです。
実際、ロケットの軌道計算では、空気抵抗や燃料消費を含んだ運動方程式を数値的に解いているそうです。すなわち、影響が小さいことに関しては無視したうえで、理論を用いています。それで実際に上手くいっています(当然失敗することもあるが、宇宙に行けている)。
理論をどのように使うか
そもそも、なぜ無視する要素が出てくるのでしょうか。
最新のコンピュータなどを使えば、結構計算できそうに思われるかもしれません。しかし、実際は先ほどの卓球ボールの例だと、「変化球」まで厳密に計算するには、回転、乱流、表面摩擦など、膨大な要素を組み込まないといけません。これは、現代の高性能なコンピュータを用いても結構大変なことで、無駄にコストがかかります。それならば、やはり影響の少ない無視できる要素は無視して、コストを下げた方が総合的に考えると良いわけです。要は、一般的な場合と同じで、「出来とコストはトレードオフ」ということです。
例えば、円と円くらいの差であれば考慮しなければならないと思いますが、円と円であれば円と大雑把に考えるのではないでしょうか。そういった感じです。実際の研究においては、ここまでわかりやすくどの要素がどの程度効いてくるかはわかりませんが、大雑把な考え方はこのような感じです。すなわち、どこまで考慮するかをちょっとずつ変えながら解析するのが一般的だと思います。
理論の価値
理論とは、「現実のふるまいに対して、どの範囲まで使えるかを知ったうえで使う道具」です。予測精度が足りないなら、より複雑なモデルに拡張しますし、それでも難しいときは、数値シミュレーションや実験に頼ります。
つまり、「理論と現実は常にズレるものとして扱う」のが科学的な態度なのです。
「意外と理論って大したことないんだな…」と思われたかもしれません。一方で、これだけ複雑な世界から、あれだけシンプルな普遍的な式を抽出したともいえます。科学の理論は万能ではありません。現実の世界はとても複雑で、予想外のことが多く起こります。それでも、その中で法則を見つけ、予測し、使える道具として精度を上げていくという営みが、まさに「科学の面白さ」そのものなのです。ぜひ、そういったことも考えた上で、科学に触れていただきたいと思います。
数式をキレイに書く方法
みなさんは、パソコンで文章を書く際、どのアプリを使っているでしょうか。おそらく、多くの人は社のを使っているのではないでしょうか。僕も子供のころからよく使っています。非常に汎用的かつ使いやすいと思います。
一方、科学の世界では、あまりは使われていません。というのも、式を書くうえでははあまり向いていないからです。
一般に、で数式を書く場合、「挿入」タブをクリックし、右側の「記号」グループにある 「数式」をクリックして書くことになると思います。これは、わかりやすい反面、複雑な式だと見栄えが良くなりにくいのと、結構時間がかかるというデメリットがあります。
では、何がよく使われているのでしょうか。
それは、LaTeX(ラテフ)です。これは、スタンフォード大学の 教授が開発したと呼ばれる組版処理システムをもとに開発されたものです。非常にキレイに式を書くことができ、かつ、コードで書くので、でボックスを埋めていくようなことをしなくても済みます。問題点としては、コードで書くので、コードを覚えないといけない点ですが、幸いにして現代では調べる方法はいくらでもあるので、そこまで大きな問題にはなりません。
なお、東京都立大学のサイトにかなりわかりやすく、いろいろなことが書かれています。興味があったら、一度いろいろとやってみるのも良いのではないでしょうか。
余談ですが、本サイトの数式は、の親戚であるというもので書かれています。は、ブラウザ上で高速に数式を表示するための軽量なライブラリで、風の記法を使って記述できます。したがって、普通に書くよりはキレイに、かつ複雑な式が書けるように仕上がっていると思います。
例えば、普通に書くと、1+1=2となりますが、で書くと、となり、あまり違いがなくありがたみを感じません。一方、後述する(磁束密度)と(磁場)の関係式のように段々と複雑になってくると話は違ってきます。実際、普通に書くだけでは、
などとは書けません。ベクトルの矢印や、下付き文字が書けないので。なお、「$」マークで挟んで、\vec{B} = \mu_0 \left( \vec{H} + \vec{M} \right)と書くと出てきます。
「磁場」という言葉が表すもの
突然ですが、みなさんは磁力をご存じでしょうか。子供のころに、磁石の極と極を近づけたり、極同士、極同士を近づけたりして、遊んだことがあるかもしれませんが、あの、近づいたり離れたりしようとする力のことです。
この力は、大雑把にいうと磁場というものが原因で発生しているのですが、この磁場というものは非常に厄介で、本によって何のことをいっているのか変わります。
大判焼き、今川焼き、回転焼きなど、同じものに対して複数の呼び方があるのであればまだわかるのですが、磁場に関しては、磁場という呼び方なのに別のものを指していることが多々あります。
ここでは、そのことに関して、紹介いたします。
magnetic flux density
まず、磁場と呼ばれることがあるものの一つとして、磁束密度( )があります。記号としては、ベクトル量なので、などと書きます。なお、単位は(テスラ)です。
翻訳元の英語をみると分かりますが、「 」と書かれています。が束、が密度という意味なので、全然磁「場()」ではないわけですが、こちらのことを磁場と呼ぶことが多いようです。
理由として一般に言われていることは、こちらの磁束密度が、実験した結果としてダイレクトに得られる量だからであるようです。したがって、そういう意味では合理的ではあります。なお、僕が持っている教科書にも、の方を磁場として書いてあるものが何冊もあります。
magnetic field
次に、磁場と呼ばれることがあるものの一つとして、磁場( )があります。記号としては、こちらもベクトル量であるため、などと書きます。なお、単位はとなっています。先ほどのとは単位が違うことからもわかる通り、ここでいうとは別物です。
翻訳元の英語をみると分かりますが、こちらにはちゃんと「」と書かれており、ちゃんと磁「場()」の要素が入っています。したがって、本来はこちらを磁場と呼ぶ方が正しそうではあります。実際は、の方を磁場と呼ぶことがあるわけですが…
理由として一般に言われていることは、こちらの磁束密度が、実験した結果としてダイレクトに得られる量ではなく、あくまで理論的な話で出てくることが多いからのようです。これには、実際の関係式を見てみるとわかりやすいです。先ほど載せた式とまったく同じですが、基本的なとの関係式はこのようになっています。なお、は磁場に対する真空の応答を表す定数で、ここではそこまで重要ではありません。
左辺のが実験でダイレクトにわかることなわけですが、右辺にはなるこれまでなかった項が出てきています。これは、磁化と呼ばれるもので、磁場に対する応答のある磁性材料などがあると、その影響が出てしまうため存在しています。「鉄に磁石を近づけて放置すると、鉄が磁石になる」みたいな話を聞いたことがないでしょうか。あれがまさに磁化です。したがって、純粋なのみを計算する場合、磁化を考慮しなくてはならず面倒です。こういった理由で、の方が磁場と呼ばれているようです。
余談
なお、余談ですが、鉄のような磁化が非常に強く、非線形な応答を示す物質を強磁性体()といい、電磁石として広く利用されています。同じ金属でも、銅などに磁石を近づけても磁石にはならなかった(磁化しなかった)と思いますが、強磁性体はかなり特殊なものです。
ちなみに、さらに補足すると、磁場に対する応答の仕方によって物質は次のように分類されます:
- 強磁性体():鉄やニッケルなど。大きな磁化を持ち、ヒステリシスを示す。
- 常磁性体():酸素、アルミニウムなど。外部磁場があると、わずかに磁化する。
- 反磁性体():銅や水など。外部磁場と逆向きに磁化される性質を持つ。
物質にはいろいろな性質がありますね。非常に面白いと思います。
おわりに
本記事では、理系に関係する雑学ネタを紹介してきました。
結構ハイレベルな話をしてきました。大体、高校から大学くらいのレベルでしょうか。本記事が読めている、中学生以下の皆さんはかなり自信を持って良いと思います。
科学に興味を持っていただけたでしょうか?
もし、実際に興味を持っていただけたら非常にうれしいです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。他の記事(特に歴史カードゲームHi!story(ハイスト)の思い)や本家のハイストの方もよろしくお願いします。
また、下の方にあるアンケート欄に感想を入力していただけると励みになります。ぜひ、よろしくお願いいたします。

ライターに応募