放課後のハイスト
「女子枠」は失敗だったのか? ~最新のニュースをもとに考察してみた~

「女子枠」は失敗だったのか? ~最新のニュースをもとに考察してみた~

投稿日: 2025年02月13日
最終更新日: 2025年02月13日
RopiRopi

最近、このようなニュースがありました。

https://www.sankei.com/article/20250211-D24GYQIE3FIPXOPEGMOAR7BWNE/?outputType=theme_nyushi

「女子枠」を導入したは良いものの、大学によって人気に大きな差が出てしまったそうです。

「女子枠」の導入により、理系分野での男女比改善が期待されていますが、ここまで差が出てしまうと、「女子枠」の本来の目的が達成できないのではないかと思いました。

そこで、本記事では、現役理系男子大学生の視点から、このニュースに関して考察してみたいと思います。

そもそも「女子枠」とは?

日本の大学の理工系の学部では、男女比がかなり偏っているという現実があります。それ自体が、「試験の結果であるから構わないことなのか」、「そもそも他の学部では逆に男子が少ない学部もあるのだから、偏りがあること自体悪いことなのか」といった議論はありますが、こういった偏りをなくすことが「女子枠」の大きな目的となっています

一般に、理系の適正に性差はないと考えられており、それにもかかわらず理工系の学部で男女比が9対1から4対1程度になっているのは、社会の方に問題があるのではないかと考えられています。例えば、社会学的には、「女性は理系に向かない」というジェンダーバイアスが存在していると考えられており、そのバイアスを是正し、平等な機会を提供することが一つの目的となっています。「理系に興味を持った女子が、進路を諦めることのないようにしたい」ということです。

こういったジェンダーバイアスを、読者の皆さんはあまり意識されないかもしれません。それは、そういう良くない状況が当たり前になってしまっているからか、すでに格差の是正が進んでいるからかもしれません。後者であれば、それは非常に良いことであると思います。

理工系で女性の視点が重要な理由

理工系の場で男女比が偏ることによって生じる不都合は、たしかに存在します。

例えば、男性基準で車などが作られる(より具体的には、男性型のダミーで実験を行う)ことにより、「事故が起きた際、男性では耐えられるが女性では耐えられないように作られてしまう」ということが起こり得ます。実際に、この話は問題になりました。やはり、客観的に製品を作るということは難しく、そういった際に女性の視点は重要となります。

男女比の偏りの是正は、「思いもよらなかったもの」がうまれるチャンスとなり得ます。

「女子枠」は適切な手段となっているか?

引用元のニュースをみると、「大都市近郊の大学は人気があるが、地方にある大学は人気がない」ということがわかります。すなわち、「一部の大学に人気が集中している」ということです。

人間、進学できるのであれば、できる限り「良い大学」に行きたいと考えるとは思うので、人気が偏ること自体は理解できます。例えば、「世界中のどの大学でも、学費や生活費を補助したうえで進学できる」としたら、国内であれば東大、国外であればハーバード大学やオックスフォード大学などに進学を希望する人が多いのではないでしょうか。実際は、自分の学力などと相談したうえで受験校を決めるわけですが、チャンスがあるなら、できる限り「良い大学」を受験するとは思います。

一方、「女子枠」という特殊な入試ではそうも言ってられないのではないかと思います。先ほど述べた通り、「女子枠」の大きな目的は、「理工系における男女比の偏りをなくす」ためのものです。一方、今回のニュースを見る限り、「女子枠の影響があるのは人気のある大学だけで、大学全体でみると、ほとんど女子学生の割合は増えないのではないか」と考えられます。もしこの考察が正しいのであれば、「理工系における男女比の偏りをなくす」という目的の達成のための手段としては、不適切なのではないでしょうか。

理工系の男女比の偏りをなくすには?

「理工系における男女比の偏りをなくす」という本来の目的の達成のためには、「女子枠」のような短期的な対策に頼らず、根本的に「不人気な大学が選ばれるように、受験生から見た価値を上げる必要がある」ように思います。

地方にある大学は、立地面では大都市近郊の大学には勝てませんが、その土地ならではの研究をやっているところは多いです。

例えば、秋田大学はかつて「秋田鉱山専門学校」であった関係で資源系に強く、信州大学は国内で唯一の繊維学部を持ちその分野では世界トップクラスの研究をしており、香川大学はうどん関連の研究に強く、琉球大学は立地の関係で熱帯生物の研究に強いです。最近では、福井県立大学に恐竜学部ができたことがニュースになっていました。

有名なところだけでも、地方の大学ではこれだけの特色のある研究が行われています。逆に言えば、メジャーな研究分野、例えば機械系や電気系、物理系などではやはり難関大・有名大が強いことが多いわけですが、こういった「特殊な研究では強い」ということを、大学はもっとアピールするべきだと思います。

また、大学間で連携するというのも良いかもしれません。幸いなことに、リモート授業は一般的になっており、物理的に遠くても、協力することは可能です。さらに、国内ではありますが、交換留学のような形で色々な大学で学べるような制度を作れば、結構需要があるのではないかと思います。個人的には、他大学の雰囲気は結構知りたいです。良い体験になるのではないかと思います。

おわりに

個人的に、理系の女性を増やそうとする取り組み自体は大賛成ですが、その目的を達成する方法として、「女子枠」という手段が良いかは疑問が残ります。

まだ女子枠が始まって日が浅いわけですから、今後どんどん改善されていく可能性もあります。しかし、現行の制度のままだと、本来の目的は達成されないまま終わりそうです。もっと、根本的な改革が必要なように思います。

個人的には、「大学そのものが、もっと進学したいと思えるような大学になること」が重要であると思います。全員が全員、勉強したくて大学に行くわけではない(遊びたくて、人生のモラトリアムとして行きたい人もいるでしょう。個人的には、それ自体は否定しません。)と思うので、なかなかニーズを満たすのは難しいかもしれませんが、強みをアピールすることは重要だと思います。また、大学間での連携も重要になってくると思います。

「女子枠」をきっかけに、各大学が自分たちの強みをさらにアピールし、女性が理工系分野でより活躍できる環境が整うことを期待したいと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。本家のハイストのカードゲーム (https://highsto.net) やほかの記事の方もよろしくお願いします。


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この記事を書いた人

Ropi
Ropi

「放課後のハイスト」ライター

物性物理学全般を勉強中です
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』を3回観てきました。文句なしの神映画でした。続きが非常に楽しみです。

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