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機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning- で考える歴史 【ネタバレ注意】

機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning- で考える歴史 【ネタバレ注意】

投稿日: 2025年02月03日
最終更新日: 2025年02月03日
RopiRopi

情報が公開されてからずっと楽しみにしてきた『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』を観てきました(今のところ3回)。

想像を余裕で「ぶち抜いてきた」(『Plazma』だけに)神映画でした。

やりたい放題でした。常識にとらわれてはいけませんね。

なお、これ以降大量のネタバレを含みますので、映画を観ていない人は観てから読まれることをおすすめします。以下の写真は映画館で撮ったものです(画質が悪いですが…)。今のところ個人的にはマチュが一番かわいいと思いますが、本編が始まったらニャアンの人気が上がってくる気がします。

はじめに

まず、ファーストガンダムの完成度の高さを再認識させられました。未だに、これだけネタが尽きないのは原作の完成度の高さ故だと思います。

しばしば、「どうすればジオンは勝てたのか論争」がありましたが、一つの解答を見せつけられました。

そこで、今回は実際の歴史に関係する映画のあらすじと感想を語りながら、現実の歴史における「もしも」を考えてみたいと思います。

衝撃の歴史改変

いわゆるファーストガンダムの世界において、「ジーンが出撃せず、シャアが自ら乗り込み、なおかつガンダムを奪取する」という「そんなんありかよ…」という始まり方でした。しょっぱなからぶっ飛びすぎですね

さらには観たことある構図や聴いたことあるBGM、セリフのオンパレードでした。本当にやりたい放題でした。いわゆる聖域のような扱いをされているといってもよいファーストガンダムで、ここまで大規模な改変を行うという発想が僕にはありませんでした。どうすればこういった柔軟な発想が出てくるのでしょうかね。

そこから当たり前のようにガンダムを乗りこなし、サイコミュを搭載し、シャリア・ブルと組んで暴れまわりました。「シャアとシャリア・ブルががっつりと組む」という話自体は小説版にありましたが、その設定を拾ってくるとは思いませんでした。ブラウ・ブロの名称もキケロガに変わっていましたし、『シン・ウルトラマン』のゾーフィと同じように、設定拾ってくるのがうますぎますねやっぱり。実際、パンフレットを読むと、仮想戦記として作りたかったようなので大成功だったと思います。

もしも○○だったら…

『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の面白いところは、今までの歴史を真っ向から覆すストーリーにしたところだと思います。歴史が好きな人なら、もしも明智光秀が織田信長を裏切っていなかったらとか、もしも関ヶ原の戦いで西軍が勝っていたらとか妄想したことがあるかもしれません。実際、現代でも歴史に関係する作品はたくさん作られているわけですが、史実に忠実なものもあれば、史実から大幅に改変されているものもあります。どちらが良いか悪いかという話ではないですが、後者は歴史に対して誤った認識を与える可能性もあるので、鵜呑みにはしない方が良いと思います。一方、作中での描写と実際の話を比較することで、より理解度が高まる可能性もあります。一長一短ですね

さて、歴史というものは重要人物が何をしたかで大きく変わるところがあります。「偉大な指導者」といわれるような人が政治家になる道を選ばなければその国の歴史は大きく変わったでしょうし、「偉大な学者」も学問の道に進むことが出来なかったのであれば、科学の発展が数十年単位で遅れることになったかもしれません。そして、そういう重要人物に関わる人の多くは一般人なわけです。すなわち、我々一般人も良くも悪くも歴史に大きくかかわることになるかもしれません。今回のガンダムの例では、「シャアの部下」という以外はごく普通の一般兵であったジーンがどのような行動をとるかが、戦局に大きく影響を及ぼしたことになります。実際、このようなことは後述するバタフライ効果により、十分にあり得ることであるといえます。

個人的に「受験勉強としての歴史」は覚えないといけないことがたくさんあって苦痛でしたが、このように、歴史を「人々の人生が複雑に絡み合ったもの」と考えるのであれば非常に面白いと思います。なお、科学の世界ではこのような「多くの要素が相互作用して全体として新たな秩序を生むシステム」のことを複雑系といったりします。生命現象なんかもこれに属します。最近では結構ホットな話題だと思います。また、これは「初期条件のわずかな違いがシステムの挙動に大きな影響を与える現象を研究する分野」であるカオス理論と呼ばれるものとも関係があったりします。カオス理論の中ではバタフライ効果が代表例です。

そういう「もしも」を、宇宙世紀という非常に長い物語の中でやってのけたところは非常にすごいと思います。ファーストガンダムですら劇場版で3部作必要だったわけですから、おおよそ40分程度にあれだけの内容を収めたのはすごすぎます。まあ、「なかったことになった歴史」はたくさんあるわけですが。おそらくゲルググは生産されていませんし、なんならメジャーな話だけでもZガンダム以降のガンダムがすべてなかったことにされています(0083はZほどメジャーではないと思うので割愛しました。すみません。個人的にゼフィランサスは非常に良いデザインであると思っているので、別に作品が嫌いなわけではありません。)。

ジオン勝利後の世界

打って変わって、後半はまったく知らない話でした。

「ジオン勝利後の世界」というものは今までほとんど想定されてこなかったと思います。ジオンが勝ったことにより大規模な戦争は起きていないようですが、それでも事実上の支配体制のようなものは残っているようで、何とも言えない気持ちになります。

第二次世界大戦で日本やドイツが勝っていたら世界はどうなっていただろうか」みたいな感じでしょうか。もともとのファーストガンダムは、日本vsアメリカがモデルという話もありますし、結構あっているとは思います。

なお、主人公のマチュが暮らすイズマ・コロニーはほぼほぼ現代日本のような感じになっており、なじみ深い感じがします。多分、マチュも日系人だと思います。どうも地毛は黒っぽくて、赤く染めているようです。実際、公用語も日本語なようで面白いです。状況のモデル自体はおそらく戦後の日本(ただし、環境は現代日本)で、ジオンがアメリカに相当するような感じがします。マチュが住んでいる地域の主に日系と考えられる人たちは、かなり良い暮らしをしているようです。特に軍警察のビルが非常に大きく、高層ビルもたくさん建っていました。

一方、おそらく日系人以外の難民がたくさんいます。ここは、戦後日本と異なるところであったと思います。難民は主に違法建築が立ち並ぶところで暮らしているようです。そして難民としては、ヒロイン(?)であるニャアンがおそらく東南アジア系、カネバン有限公司の「公司」は中国語で会社という意味なので中国系っぽいですね。多種多様な民族が入り乱れているような感じがします。そんな中、公用語が英語ではなく日本語っぽい(多分)ところが面白いです。

そういうわけで、コロニー内部というかなり限られた範囲の物語ではありましたが、目に見えて格差が描写されていたように思いました。特に、主人公のマチュとヒロイン(?)のニャアンとの間にある格差がひどかったように思います。現代社会のようですね。

なお、以下の写真も映画館で撮ったものです(画質が悪いですが…)。

明治維新との類似点

日本の歴史をみると、1800年代後半にもともとの徳川幕府による支配から、明治維新により天皇を中心とする中央集権的な近代国家となりました。

それ自体は「近代化の先駆け」といえるので良いことのように思えます。しかし、「民衆にとってそれがプラスにはたらいたのか」という問題があります。実際、税負担などは事実上ほとんど変わっていなかったといわれています。これも「連邦による支配が続こうが、ジオンによる支配に変わろうが、民衆にとってきついことに変わりはない」ことと同じような気がします。ざっくりと分けると、スペースノイド(宇宙に住んでいる人たち)とアースノイド(地球に住んでいる人たち)という分け方になりますが、スペースノイド全体が対等な関係で、同じ考えであったかというとまったくそういうわけではなかったからです。

日本の歴史に当てはめると、アースノイドが幕府側でスペースノイドが薩摩藩や長州藩といった感じでしょうか。スペースノイドといっても、すべてがジオン側ではなかったことを考えると、割とあっているような感じがします。また、「平家にあらずんば人にあらず」という言葉もあることですし、アースノイド側に平家、スペースノイド側に源氏でも良いかもしれません。勉強になりますね。ただし、制作陣がこういった歴史的な事実を考慮したうえで話を作ったのかは不明です。一介のファンが勝手に言っていることだと思っていただけたら幸いです。

おわりに

本当はもっといろいろと語りたいですが、今回はこれくらいにしておきます。

個人的に間違いなくおすすめできる映画なのでぜひ観てください。

本放送が待ちきれません。

また、モデルとなった歴史に興味がある場合は、ぜひほかの記事や、ハイストのカードゲームの方もよろしくお願いします。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


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この記事を書いた人

Ropi
Ropi

「放課後のハイスト」ライター

物性物理学全般を勉強中です
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』を3回観てきました。文句なしの神映画でした。続きが非常に楽しみです。

よろしくお願いします

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