東大に入ってから理転した話 〜文理選択で何を考えていたか〜
私は文科II類で受験して東大に入学し、大学2年の進路選択で工学部の情報系学科に進学することを決めて、理転しました。
その経験の中で感じたことや、良かったこと、後悔、文理選択で意識するべきことについてお話しします。
なぜ文系を選んだか
私が文系を選んだ理由は主に3つです。
- 起業したいという気持ちがあり、経営学などが役立つと思ったから
- ゲーム理論などや世の中のお金の流れなど「経済」分野に興味があったから
- 研究職などに興味がなく、理系からなれる職業で惹かれるものがあまりなかったから
この選択に至るまでの幼少期からの自分の興味の移り変わりを振り返ってみます。
幼稚園〜文理選択まで
私は、幼稚園〜小学校4年生くらいまでは算数に興味があり、どんどん先に進んでいってしまうくらいでした。
これは、私が幼稚園と小学校で「モンテッソーリ教育」を受けており、自由に学びを選択できたことも大きいと思います。この話はまたいつかしようと思います。
生物(特に昆虫)も好きで、「昆虫博士になりたい」と言っていたのを覚えています。
小学校5年生〜小学校6年生に、突然「社会科」への興味が強くなりました。大河ドラマの影響で歴史に興味を持ったのと、社会の仕組みなどへの興味が湧いてきました。また、小説を書いてみたり、弁護士になりたいと言っていたり、文系を中心に様々なことに関心を持っていました。
中学に入ると、今度は数学への興味が強くなりました。数学をどんどん先取りして、数学研究会を作ったり、数学検定の何学年か上の級を取ったりしていました。
中高一貫校に入ったので、高校受験はなく高校1年生の時に文理選択を迎えることになります。
文理選択
いよいよ文理選択を迎えます。
この時は、とても悩みました。成績的には文系も理系も大差なく、数学と社会が特に好きというちょっと特殊な興味の範囲でした。
ここで文系を選んだのが、冒頭の理由になります。再掲します。
- 起業したいという気持ちがあり、経営学などが役立つと思ったから
- ゲーム理論などや世の中のお金の流れなど「経済」分野に興味があったから
- 研究職などに興味がなく、理系からなれる職業で惹かれるものがあまりなかったから
起業については、漠然とした憧れや「自由」というイメージで惹かれていたと思います。
経済分野に関しては、数学と社会の仕組みが共に好きだったので、大学の学部などを調べる中で自然と興味を持っていました。
最後については、「理科」にそこまで興味があったわけではなく、興味のあった数学(特に純粋数学)では職に困りそうなイメージもありました。また、一つのことをずっとやるのが嫌で色々なことをやりたかったというのも研究職に惹かれなかった理由でした。(イメージなので、実際はそこまで極端ではなかったと思います)
この辺りを総合的に考え、文系を選びました。
仲の良かった友達みんなに「理系に行くと思っていた」と驚かれたのを覚えています。
受験では経済分野への興味が消えていなかったので、経済系の学科ばかりを受けました。
幅広いことをやりたかったこともあり、東京大学文科II類が第一志望でした。
理転するまで
東大の進路選択について
東大の特殊なところとして、進路選択制度(通称「進振り」)があります。
最初の2年間は全員が「教養学部」に入り様々な分野について広く学び、3年から好きな学部学科に入って専門に分かれるという仕組みです。(正確にいうと2年前期までの成績で進学先が決まり、2年後期は専門の学科の授業ばかりになります)
この面白いところは、教養学部(前期課程)時代は文理を問わずにほとんどの授業を取れること(必修や3年への進級要件は文系・理系で異なります)と、文系で入学していても理系の学部へ行けることです(一部の学科は例外があります。また、成績順に内定が決まるので人気なところは簡単にはいけません)。
東大にて
東大に入って、最初は文系の授業を多めに、少しだけ理系っぽい授業も取りました(仕組み的に理系の「系列」の授業を取ることになりがちです)。
(春のうちに「簿記3級」を取り、起業してから結構役に立ちました笑)
ここで出会いがありました。
必修で取った「情報」の授業で、(先生によって違うらしいのですが)プログラミングを実際に行う授業がありました。
ここで、プログラミングの面白さにハマりました。
夏休みはずっと自分でプログラミングをしていました。(競技プログラミングをやったり、kotlinでandroidのスマホアプリを作ってみたり)
プログラミングへの興味は衰えを知らず、進路選択ではそのまま理系の情報系の学科に行くことを決めました。
1年の後半の授業は必修・準必修以外はほとんど情報系の授業を取りました。
そして、迎えた2年夏の進路選択で、無事に進みたかった情報系の学科に進む事ができました。
文理選択で良かったこと、後悔していること
大学内で理転しているのでたまに聞かれることがあるのですが、「はじめから理系だったら良かった」と思うことは、実はあまりないです。
社会科も好きだったし、文系として勉強した経験が役に立っているなと思うこともあるからです。
歴史のカードゲームを作っている関係で日本史と世界史を受験レベルで理解していることはとても役立っていますし、受験勉強だけでいうと数学は適度にやりながら社会なども広くできたのはとても楽しく勉強できたなと思います。
(久しぶりに理系の電気などを大学レベルでやるのはちょっと大変ですが。。)
良かったなと思うのは、自分でしっかり考えて決めたことです。
自分の自由と責任の元でしっかり考えて決めることができたことがとても良かったと思っています。後で「やっぱり違った」となった時に、他人の言葉に従って決めていた場合はやるせない気持ちになっていたと思います。
個人的に思う文理選択のポイント
大学で理転した自分だからこそ言える文理選択のポイントは主に3点です。
「興味のあるものを選ぶ」というのはいうまでもないと思うので、それ以外のポイントをあげておきます。
- 最後は自分で決める
- 学んだこと・選んだことは、必ずどこかで何かにつながると意識する
- あまりにも苦手なものは避ける
最後は自分で決める
後悔が大きくなるのは「他の人に流されて選択した時」だというのが今まで生きてきて感じたことです。
自分で決めたことなら自分で責任を持って納得することはできますが、
- 仲のいい友達が行くから
- 先生に勧められたから
- 親に言われたから
などで決めた場合、それで後悔した時に人のせいにすることしかできなくなってしまいます。
意見を聞くのは大事ですが、最後は自分で納得して決めましょう。
必ずどこかで何かにつながる
Apple 創業者のスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で語った
Connecting the dots
のスピーチを知っていますか?
意味がないように思えたことも、後から振り返ると何かにつながって意味のあることになる、そんな点と点が繋がる瞬間が必ずある。
中学校の英語の授業でこのスピーチを暗唱するものがあり、さらにこれに関する体験談を高校の卒業の時に英語の先生にしてもらったことがあり、深く印象に残っています。
私自身も、どうせ受験だけでしか使わないと思っていた歴史や古文・漢文などの知識が歴史のカードゲームを作ることに役立ったり、文系だから趣味程度と思いながらやっていた数Ⅲが理転して役立ったり、損得勘定なしで仲良くしていた友人が会社を手伝ってくれたりと、「点と点が繋がる」経験をたくさんしています。
だから、無駄なことは何もないと信じて、思い切って選択するのが良いと思います!
必ずそれはあなたの人生のどこかで何かに繋がるはずです。
あまりにも苦手なものは避ける
先生などに、「苦手でも好きなものを選べ」と言われることがあると思います。
これは正しいと思います。嫌いなものではモチベーションが続きません。
でも、あまりにも苦手なものを選ぶのは得策とは言えないと思います。
「興味」や「やりたいこと」というのは意外と簡単に移り変わるものです。
特に文理選択で悩むような人は、後からもう一方への興味が強くなるかもしれません。
興味が変わった時でも、受験の方法を変えて(総合型選抜や文理融合の学科など)なるべくそっちのことができるようにしたり、大学に入ってから(東大内での理転のように)変える方法を探したり、卒業してからもう一度大学に入り直すなどでやり直したり、趣味で続けたりと、様々な方法があります。
でも、あまりにも苦手なものを選ぶと、全く勉強がうまくいかず、逆に選択肢を狭めることになりかねません。
自分の思いの強さと苦手度合いによるので答えはないのですが、「文理選択で選んだ方の仕事にしかつけない」とまで思う必要はないと思います。
最後に
ここまで長く書いてきましたが、当時の自分や似た境遇の人に一番言いたいのは、「思い詰めるな」「なんとかなる」です。
後悔は避けようと思って避けられるものではありません。
後悔はするものだと割り切って選ぶのが一番です。後悔してもいいから自分で決める、これに尽きると思います。
私の周りにも文理選択で失敗したと思っている人も何人もいますが、それで人生が終わるわけでも暗いが未来が待っているわけでもないです。
ただ、ダメージがなるべく少なくなるように、色々な人の話を聞きましょう!
聞けるだけのことを聞いて、調べられるだけのことを調べて、納得して選択しましょう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。