
【後編】灘中に受かるまでの軌跡|6年生の過ごし方、過去問、合格発表の日
はじめに
前編では、私がどんなきっかけで灘を目指したのか、浜学園での過ごし方や、親との関係、本の重要性などをお話ししました。((https://media.highsto.net/articles/nada-goukakumade-zenpen))
後編では、いよいよ小6の受験学年に入ってからの過ごし方、勉強の質と量のリアル、そして受験当日から合格発表の瞬間までをお届けします。
小6のリアルな1日のスケジュールと成績推移
よく聞かれるのが「1日どれくらい勉強してたの?」という質問。答えは、「それほど多くなかったかも?」です。
まず僕の平日の1日はこんな感じでした。
- 6:00 起床、朝勉強(30〜60分)
- 7:00〜15:00 朝食後学校へ(放課後に友達と遊ぶ日がほとんどでした)
- 17:00〜20:00 浜学園の授業(週5日ほど、無い日はサッカーの習い事やスポーツ観戦など)
- 20:30 夕食・入浴・宿題の仕上げ
- 22:00 就寝
土日でもおおよそ以下のようなスケジュールでした。(特訓などもっと授業が長い時も多々ありました)
- 6:30 起床、朝勉強(90分)
- 8:00〜12:00 朝食後、残っている宿題などをする
- 12:00〜17:00 近所の公園で遊んだりスポーツ観戦に行ったり
- 17:00〜20:00 浜学園の授業(もっと早い時間からある時もありました)
- 20:30 夕食・入浴・宿題の仕上げ
- 22:00 就寝
夜更かしは基本せず、宿題が残っていなければすぐ寝ていました。逆に、詰め込みすぎず毎日一定のリズムを保つことの方が大事だったと思います。
この時期は、平常授業に加えて土日の特訓系も充実しており、週5以上は塾がありました。とはいえ、僕のスタンスは小5までとあまり変わらず、塾の授業時間をフルに活かすために“内職”(=塾の授業中にその回の宿題を進める)を駆使して勉強効率を上げていました。もちろん分からない内容だった場合は授業を聞くのですが、分かる内容なら授業を聞く時間は時間効率が悪いように感じていたため、その回の宿題をやっていたというわけです。
ただし、学校では絶対に内職しないようにしていました。学校は友人と楽しむ場所であり、受験勉強と完全に切り離したかったからです。
また、この頃は、自分で「わからなかった単語や問題」をまとめるノートを作っていました。灘中入試には漢字や外来語など、少し癖のある問題も多いので、知らないものが浜の教材や模試で出てきたタイミングで、自分で整理することで記憶の定着がよくなりました。
そして小6での平常授業のクラスはV2 → V1 → V0と順調に昇格し、最終的には全教科でV0クラスになりました。ただし、本番では算数が思うように取れず合格者平均を大きく下回る得点でした。(後で当日の感触などは詳しく書きますね!)一方で苦手だった国語が得点源になりました。どんな出題傾向でも対応できるように、「得意教科に依存しすぎないバランス型」を意識することの重要性を実感しました。
過去問との付き合い方:量より“質と距離感”
まずは軽く入試方式についてお話しします。
- 試験日:1日目と2日目の2日間に分かれて実施(算数と国語が2日間に分かれての実施)
- 科目と配点:算数(200点)・国語(200点)・理科(100点)
つまり、合計500点満点で、その中でも算数と国語が重要(各40%)です。
理科は、一見20%分しかないので軽視されがちですが、ボーダーライン上では非常に効いてきます。実際、理科が苦手なのに安定して総合点で高得点を取っていた人は少ないように思います。というのも理科は一定程度勉強すれば最低限ボーダーラインの点数は取ることができるからです。
灘の問題は良問ぞろいですが、それゆえ授業や模試で出されることも多いです。そのため、「あ、この問題解いたことがあるな」と既視感のある問題が含まれることがほとんどで、純粋な実力を測ることは難しいため、「1年分を丸ごと解く」ことにこだわらなくていいと思います。
実際に私が行っていた過去問との付き合い方は以下のようです。
まず、算数に関しては20年分の過去問を購入しました。しかし全部はやらず、好きな単元をつまみ食いする程度にとどまっていました。(親は全部やってほしそうでしたが笑)
また、国語・理科は5年分ほどを解いて、傾向を把握し、同じ年度の問題を繰り返し解くなどはあまりしませんでした。
ポイントは、「灘の問題は“覚える”対象ではない」ことです。灘ほど入試問題の質が高い学校だと、全く同じ問題が出ることはまずありません。
そのため過去問は「傾向を掴むツール」として活用し、思考の筋力を鍛えることを意識していました。そして、「すべての解法を記憶して解けるようにする」など過去問への過度な依存は、むしろ柔軟な思考力を狭めてしまうかもしれないと感じており、敬遠していました。
逆に問題形式に慣れるためには模試を活用することが効果的でした。
受験当日の記憶
正直、当日はそこまで緊張していなかったです。浜の模試や特訓などで「灘の形式」に慣れていたので、いつも通りやれば大丈夫だと自分に言い聞かせていました。
浜学園では朝に住吉校に皆で集まり問題を解いてから、旗を持ってまるで戦国時代の出陣前のように旗を持って学校まで闊歩していくという独特な慣習がありました。そして会場に入る前には花道を作って先生たちが激励してくださりました。当時の私はひねくれていたので、この文化に対し怪しげな宗教じみた雰囲気を感じて嫌だなと思っていたのですが…笑
実際、数百人規模の生徒がいるため、周囲からするとかなり異様な集団だと捉えられており、入学後に浜出身でない友達からそのことを指摘されたことも度々あります。
同じ教室に何人か友人がいたので廊下で少し話してリラックスすることができたのですが、周囲が異様にピリピリしていたのは逆に印象的でした。
そしていよいよテストが始まり、1日目の算数はほとんど解けず3割ほどしかなかったのではないかという感触だった一方で、国語はそこそこ手応えがありました。そのためあまり落ち込まず2日目に気持ちを切り替えることができました。
2日目はどの教科もある程度落ち着いて解けたので、「これはいけたんじゃないか?」という気持ちは少しありました。
合格発表、そして思ったこと
合格を知った瞬間、「やった!」という気持ちよりも、「うん、まぁそうだよね」という妙な納得感があったのを覚えています(笑)。
でも親は本当に喜んでくれて、そこではじめて「あぁ、やっぱり嬉しいな」と心から思いました。家族のサポートがあったから、ここまで来られたんだなと改めて感じた瞬間でした。
そして実際の得点開示でも感触通り算数は合格者平均を大きく下回る5割強しかありませんでした。しかし国語は8割5分、理科も7割程度で余裕を持って合格することができました。
もし私が算数が得意だからと言って国語の勉強を怠っていたら絶対に合格していなかったと思います。バランスよく勉強していてよかったなと本当に今でも思います。
幼稚園の頃からやり続けた方が良いこと:読書が国語力を決める
補足にはなりますが、読者の皆様に国語でなぜ高得点を取れたのか私なりの見解を述べていきます。国語の読解力は「小手先のテクニック」では伸びません。僕が点数を安定して取れた最大の理由は、小さい頃からずっと本を読んでいたことです。角川つばさ文庫など、子ども向けの読みやすいもので十分。とにかく「活字を読む習慣」が大切です。
漫画は娯楽としてもちろん楽しいのですが、読解力を鍛えるなら圧倒的に文庫本をおすすめします。読書によって「情景をイメージする力」や「文構造を追う力」が養われ、それが中学・高校、さらには大学入試にもつながっていきます。
最後に|これから灘を目指すあなたへ
灘は確かに難関ですが、特別な才能や神童ぶりがなければ無理という世界ではありません。むしろ、
- 読書を習慣にすること
- コツコツ勉強を積み上げること
- 必要以上に背伸びせず、毎日を丁寧に過ごすこと
この3つを徹底すれば、合格は現実的になります。
僕自身も、完璧ではなかったし、模試の成績が爆発的に良かったわけでもありません。「ちゃんとやることをやって、ちゃんと遊ぶ」——その生活の中で、無理なく自然に力がついていった感覚です。
それでも、灘という最高の学校に出会い、合格し、そこでかけがえのない仲間に出会えました。だから、今振り返っても、受験は「ゴール」ではなく「入口」です。これから受験する人にも、「受かること」より「何のために受けるのか」を時々見直してほしいなと思います。
もしかしたらこの記事を読んで、「うちの子にはまだ無理かも」「自分が合格するのは厳しいな」と感じた方もいるかもしれません。でも、今回書いたことはあくまで一例であり、誰もが“自分なりの形”で近づいていける道はあると思っています。必要なのは、「知ることって面白い」「自分もやってみたい」という気持ち。その火種さえあれば、きっとどこまでも進んでいけます。
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