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E判定からの逆転合格!成功事例と実践的本番戦略

E判定からの逆転合格!成功事例と実践的本番戦略

投稿日: 2025年11月13日
最終更新日: 2025年11月13日
RopiRopi

みなさんは、以下のような話を聞いたことがないでしょうか。

  • ずっとE判定だったA君が、難関校に合格した

  • 模試では常にトップクラスで、A判定を取っていたBさんが、まさかの不合格だった

実際、こういうことは中学受験、高校受験、大学受験など幅広く毎年どこかで起こります。

なぜ、あれほど正確に見えた模試の判定と、実際の結果は食い違うのでしょうか?

それには、勝負事特有の「上振れ」、「下振れ」という現象と、模試の判定が本質的に抱える「限界」が明確に存在します。

今回は、そのことに関してお話ししようと思います。

  • なぜ「逆転合格」と「まさかの不合格」が起こるのか

  • 模試の判定を活かす方法

  • 入試本番で、上振れを起こすための具体的な3つの戦略

模試の判定の正しい読み解き方

まず、僕たちが振り回されている「A判定」や「E判定」という数字の「正体」を正確に理解することから始めましょう。

模試の判定は「未来の予言」ではなく、あくまでも「過去の統計データ」です。例えば、以下のようになっています。

  • A判定(合格可能性80 %以上):「昨年、あなたと同じ模試の成績だった受験生が、この学校を10人受験して、8人合格しました」という意味

  • E判定(合格可能性20 %以下):「昨年、あなたと同じ模試の成績だった受験生が、この学校を10人受験して、2人合格しました」という意味

ここで重要な事実は2つあります。

  • A判定でも最大「2割」は不合格になっている(意外と油断できない)

  • E判定でも最大「2割」は合格している(逆転合格はゼロではない)

この「2割」こそが、「逆転合格」と「まさかの不合格」の正体であり、ここからが本番の戦略のスタート地点となります。

なぜ受験は「判定通り」にならないのか?

基本的に勝負事は、まさかの事態が起こります。すなわち、絶対はないのです。例えば、以下のようなことが起こりえます。

  • メンタルが不安的になる:パニックになってしまい、試験が手につかなくなる

  • 体調:たまたま試験のタイミングで風邪をひいてしまったり、消化に悪いものを食べた結果、本来の能力が引き出せない

  • 問題:たまたま、全教科苦手な範囲ばかりから出題される

受験に限らずですが、何かしらのタイミングで、上記のようなことを一度でも体験された方はたくさんいらっしゃると思います。

「まさかの不合格」はなぜ起こる? A判定・B判定の落とし穴

「あの子が落ちるなんて信じられない」

最も残酷なドラマは、安全圏だと思われていた人が不合格になるケースです。これは決して他人事ではなく、明確な「敗因」が存在します。

落とし穴1:「模試」と「本番」は別物

これが最大の理由であるといってよいでしょう。

塾が実施する模試は、あくまで「標準的・総合的な学力」を測るためのテストです。広範囲からバランスよく出題され、処理速度や基礎知識の網羅性が問われます。すなわち、ある意味総合的な体力測定みたいなものです。

一方、本番の入試問題は、各学校が「こういう生徒が欲しい」という強烈なメッセージを込めて作る、非常に「特殊」で「偏った」テストであることが、特に難関校だと多いです。こちらは、ある意味限られた特殊な分野での話となります。スポーツだと、サッカーだけの能力を見るとか、水泳だけの能力を見るといったことです。泳げないカナヅチの人でも抜群にサッカーがうまいということもあり得ますし、その逆もしかりです。『ドラえもん』の「のび太」であっても、射撃とあやとりだけが試験科目であったら、ぶっちぎりのトップで合格できるでしょう。

例えば、僕の出身校である渋谷教育学園渋谷だと、2024年の算数では、高校で習う三角関数に関係する問題が出たそうです。一方、三角関数の知識がないと解けないのかというとそういうわけではなく、「考えればわかる」問題ではあるため、非常に良問だったとは思います。しかし、「ふつうに勉強」していた小学生が完答するのは難しかったと思います。なぜなら、典型問題ではないため、このような問題が問題集や模試で問われることは考えにくいからです。したがって、模試で出るような、テキストの類題や応用問題は解けても、こういう変化球的な問題には対処できない人も多いと思います。

「模試の偏差値は高いが、過去問の点数が取れない」という方がいらっしゃったら、非常に危険なサインなので、過去問を良く分析し、似た問題を出す他校の問題も解いたりして、方向修正をすることをおすすめします。見当違いの方向に進むのは避けましょう

大学入試だと、例えば、河合塾の全統記述模試というものがあります。その中では、英語だとリーディング、リスニング、ライティングすべて問われていたと記憶していますが、2次試験でリスニングを実施している大学は限られていますし、私立大学だと、ライティングを問わないところも多いです。したがって、例えば、リスニングとライティングはかなりできるがリーディングは苦手な人がいたとしたら、英語全体の偏差値は高くても、過去問はまったく解けないということも起こりえます。逆に言えば、リスニングとライティングができなくても、リーディングが得意なら合格できる可能性はあります。何を求められているか過去問で確認してから勉強するようにしましょう

落とし穴2:連続受験による「体力・精神の消耗」

中学受験では主に2月1日から数日間、大学受験では主に2月中に連続で試験が行われます。基本的にどの年代の人も、試験などの特別なイベントでは平常時よりも余計に体力を使うことになると思います。特に、早い段階で「ここは受かっただろう」と思えるようなところがあれば精神的に楽になれる可能性は高いですが、そうでない場合は、後半に行くにつれてどんどんプレッシャーがかかってくることも考えられます。平常時よりも大変な可能性があるということは、よく認識してから本番に臨みましょう

「逆転合格」はなぜ起こる? E判定からの大逆転劇

では逆に、E判定(合格可能性20%以下)からの逆転合格は、どのようなメカニズムで起こるのでしょうか。これは「奇跡」とも言えますし、明確な「勝因」があったからともいえます。

勝因1:「模試」と「本番」のズレ

A判定の裏返しです。

模試の偏差値は低いが、志望校の過去問との相性が抜群に良い

これが逆転合格の最大の要因です。例えば、以下のようなことが考えられます。

  • 一点集中型:過去問を分析し、出題範囲を予想して内容を絞ることで特定の分野だけでもハイレベルにする。予想通り本番で出題され、しっかりと正解して合格。

  • 記述・思考力型:処理速度が遅く、模試の標準問題を時間内に解ききれない(=偏差値が低い)。しかし、志望校の難関校は「じっくり考えて自分の言葉で書く」問題が中心。志望校との相性がよかったため、模試の成績以上に問題が解けて合格。

  • 相性・運の「上振れ」型:模試の平均点は5割程度(E判定)。しかし、過去問を解くと、年によってバラツキが大きいタイプ。すごく相性が悪い年は4割しか取れないが、相性が良い年は合格点が取れることもあった。そして本番当日、運よくまさにその「相性が良い年」の出題パターンが的中した。

一つ目は、いわゆる「過去問研究」が功を奏したというパターンで、大体どのタイプの試験でも「目的に合わせた最適な努力」という面で必要になってくるものです。例えば、英検なども過去問を数年分とりあえずやってみると、何となく傾向みたいなものが見えてきたりするので、何をすればよいかなんとなくわかってくると思います。いわゆる、「傾向と対策」です。一方、本当にまんべんなく出題してくるところもあるので、過去問だけをやりこんだとしても、本番ではうまくいかない可能性もあります。しかし、そういう学校であるということがわかるため、それがわかるだけでもやる価値は十分にあります。

二つ目は、「個人の特性と試験のタイプがあっているか」という相性の話であり、先ほどのスポーツの例と同じですが、相性が良ければ、模試は関係なく良い点が取れる可能性があります。例えば大学入試だと、共通テストは「時間内に大量の問題を処理する」必要が結構あります(英語・数学・国語など)。一方、二次試験では、大学にもよりますが少ない問題をじっくりと考えて解く大学も多いです(名古屋大学の理系数学では、大問一つに40分弱かけられます)。そういう面で、試験が合うか合わないかはかなり大きいです。人間の能力はそんなに簡単には測れないということです。

三つ目は、分野ごとに得意不得意があった場合のパターンです。試験というものは、しばしば非常に公平なものであると考えられていると思いますが、1回の試験ですべてのことを問うのは物理的に不可能です。必ず抜けが出てきます。したがって、その抜けの中に苦手な分野が入るか、得意な分野が入るかは非常に大きく、平均的な能力が劣っている子が、平均的な能力が勝っている子にその試験だけでは勝ってしまうということも起こりえます。そういう意味で、意外なほど試験は「運ゲー」です。当然、すべてが完ぺきな人にとっては関係ない話ではありますが。この「運ゲー」要素を減らしたい場合、全分野まんべんなくできることが必須となります。

勝因2:能力の「急激な伸び」

意外と、人間は短期間で大幅に能力が向上することがあります。受験のタイミングの小学生(12歳)にとっては、受験期の数か月から数年は大きいですし、大学受験だと、「現役生は最後まで伸びる!」ということがよく言われています。また、単純に勉強をしてから能力が伸び始めるまで、数か月のラグがあるということはしばしばいわれています。結果が出なくても、やり続けることが最終的な成功の要因になるという可能性があるということです(当然、正しい勉強法でやっている場合ではありますが)。したがって、最後に受けた模試の判定が悪くても、そこから本番までの間に急激に伸びる可能性はあります。逆に言えば、勉強をやめてしまうと、周りの急激な追い上げにより、抜かれてしまう可能性もあるということです。気を抜かないようにしましょう。

本番で「上振れ」を引き起こす3つの戦略

では、どうすれば「まさかの不合格(下振れ)」を防ぎ、「逆転合格(上振れ)」を引き起こすことができるのでしょうか。

「教育・勉強を楽しむ」という観点からも、みなさんができることは、「不安がること」ではなく、「上振れ」のための環境を「戦略的」に整えることであると思います。

戦略1:「過去問の研究」を重点的に行う

塾の一般的な授業や、一般のテキストや問題集で典型問題が大体一通り終わり基礎力が付いたら、勉強の軸足を明確に「志望校の過去問」に移しましょう。偏差値や模試の判定以上にあてになる指標が過去問です。学校によって問う内容や構成、制限時間は千差万別です。志望校に最適化するためにも、模試の偏差値という「曖昧な敵」ではなく、「〇〇中学の算数の2023年の過去問」というような「具体的な敵」と戦いましょう。一般に言われている勉強内容が、あなたにとって最適かはわかりません。

戦略2:「本番時間」に脳を最適化する

最高のパフォーマンスは、最高の体調からしか生まれません。入試は基本的に午前中から始まります。現代人の多くは夜型になってしまっていますが、朝型へ移行しておいた方が無難です。一方、体質的に厳しい場合はしょうがないので、ふだん一番体調がよかった状況を考えて、それに合わせるのがよいかもしれません。また、当たり前ですが睡眠時間が短いと、思考力はめちゃくちゃ落ちます。直前期だけでも十分な睡眠をとり、頭がしっかりと回転するようにしましょう。加えて、食事にも気をつけましょう。ゲン担ぎにかつ丼を食べようとする可能性もありますが、油系はおなかに負担をかける可能性があります。食べ慣れた消化の良いものにしましょう。個人的にはうどんは良いと思います。当然、感染症対策も重要です。インフルエンザやコロナなどには十分気をつけましょう。やはり手洗いが効果的だそうです。

戦略3:「判定」ではなく「分析」を信じる

模試の結果が返ってきたら、判定の欄は隠してもいいくらいです。見るべきはそこではありません。設問別の正答率を見ましょう。他の受験生が「できている」のに、「落としている」問題。これが最優先で潰すべき「穴」です。また、正解していたとしても適当に選んで正解していたか、間違っていてもプロセス自体はあっていて、最終的なケアレスミス(計算ミスなど)で間違えてしまったのかなども重要です。よく確認して、基本的な部分は「完璧」に近づけましょう。また、分野別の成績も重要です。「強み」と「弱み」が可視化されます。そして、そのデータを持って先生(専門家)などに相談してください。例えば、

  • 「模試ではE判定ですが、この学校の傾向と息子の強み(記述力)は合っていると思います。先生にはどう見ますか?」

  • 「模試ではA判定ですが、この学校の過去問の点数が伸びません。どの分野を勉強すれば、過去問に対応できますか?」

などと聞いてみましょう。これが模試の「分析ツール」としての正しい使い方です。先ほどの話の通り、相性が良ければ、模試の判定が悪くても十分に合格点が取れる可能性があります。

おわりに

中学受験の模試の判定と、本番の結果が食い違う理由、それは、

  • 試験におけるのメンタル・体調の「不安定さ(下振れ・上振れ)」

  • 「模試(標準的)」と「本番(特殊)」の出題傾向の「ズレ(相性)」

の2点が非常に大きいです。

模試でA判定が出ていても、志望校の傾向を軽視し、プレッシャーに負ければ「まさかの不合格」は起こります。

逆に、模試でE判定でも、志望校の傾向と強みが完全に合致し、本番でメンタルが「上振れ」すれば、「逆転合格」は論理的に起こり得ます。

模試の判定は、あくまでも一つの指標にすぎません。

結果に一喜一憂せず、志望校の合格に向けてがんばっていただけたらと思います。

受験に限らずですが、勝負ごとにおいては、良くも悪くも「絶対」は存在しません。世界ランキング1位のチームが、格下のチームに負けることもあります。

最後まであきらめずにやりきることが、一つの合格への道であると思います

本記事を、みなさんの受験に活かしていただけたら、非常にうれしく思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

なお、『放課後のハイスト』では、本記事以外にもさまざまな勉強に関する記事も掲載しています(具体的には下記のようなもの)。ぜひそちらもよろしくお願いいたします。

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加えて、本家の

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の方もよろしくお願いいたします。

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「放課後のハイスト」ライター

東京大学で量子デバイスの研究をしています。
『閃光のハサウェイ』のムビチケを買いました。

よろしくお願いします。

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