最近色々なことがあり、個人的に人生を振り返ってみようと思った結果、中学受験のことを思い出したので本記事を書きました。

主に、お子さんの中学受験を考えている保護者の方向けの記事となります。
参考になれば幸いです。

私的な経歴

僕自身は、主に都内の中高一貫校を受験し、$1$勝$2$敗の結果となり、その受かった共学の中高一貫校に進学しました。
第一志望および第二志望には落ちてしまいましたが、「人間万事塞翁が馬」という故事成語の通り、結果的には非常に良い選択であったと思います。
なお、現在では僕が受験した当時よりもかなり難易度が上がっているとのことで、今では東大の累計推薦合格者数ランキングでは日本一だそうです。
後輩が優秀すぎて困ります。

中学受験を考える際の前提条件

良い学校があるか

そもそも、通える範囲に良い学校がなければどうにもなりません。特に、地方であると、かなり交通の便が悪い人もいるでしょうし、そもそも中高一貫の進学校が少ないという問題があります。めちゃくちゃ優秀ですが、孤島に住んでいて通える学校が数えるほどしかなかったという人の話も聞いたことがあります。また、学校があったとして、その学校が後述するように、ものすごい苦労をしてまで合格を目指す価値があるのかは別問題です。大都市近郊であれば良い学校はたくさんありますが、地方だとそもそも選択肢自体が少ないため、なかなか難しいと思います。

子供の気持ち

そもそも、受験する本人が受験を嫌がっていたりするのであれば、受験そのものをするべきではないと思います。親目線では、受験によって得られると考えられる物事がたくさんあるため、受験して欲しいと思うこともあるでしょうが、本人が望まないことであるならば、結果的にうまくいく可能性はかなり低くなると思います。

特に、酷いレベルになると、いわゆる「毒親」と呼ばれるような親になってしまう可能性もあります。今でも、「親が子供に勉強などを強制する」という話は聞きますが、非常に良くないと思います。人間、強制された結果上手くいくことなど、基本的にはないのではないでしょうか。

逆に言えば、子供にやる気があるのであれば、チャレンジさせてあげる方が良いと思います。成功しようが失敗しようが良い経験になるでしょうから。

いずれにせよ、子供がどういう性格で、何を好んでいるのかは把握しておいた方が良いと思います。例えば、真面目な子供なのか、ルールを守れない子供なのかとか、サッカーが好きなのか、ゲームが好きなのか、絵を描くのが好きなのかなどです。受験が性格や好みと真逆のことになっていた場合、ものすごくストレスがかかることになると思います。それは、子供の幸福にはまったくつながらないと思います。

中学受験のメリット

周りのレベルが高い

当然ですが、進学校は生徒のレベルが非常に高いです。したがって、優秀な人と出会える可能性が、一般的な公立中学よりは高いと考えられるため、選択肢が広がる可能性があります。僕自身、超優秀な中高で出来た友達のおかげでこの仕事につけています。感謝しかありません。

安定した環境

中高一貫校では、いわゆる「問題児」は一般的な公立の中学と比べて非常に少ないです。ただ、頭が良すぎるがゆえのいわゆる奇才や変人が多い学校もあり、そういう方向性でぶっ飛んだ環境の学校もあると聞きます。某御三家の一角はそういう生徒が多いという話を聞いたことがあります。

挑戦の経験

目標に向かって、努力することは有意義です。一生モノの力になります。自分を客観的に評価し、足りない部分を如何にして補うかを考え、実行することは人生の大部分で行うことになると思います。

例えば、「計算スピードが遅いから、基本的な計算の練習をする」というように。これは、勉強に限らず、スポーツでもゲームでもなんにでも実力を上げようと思ったらいえることです。重要なことは、ガムシャラにがんばるのではなく、目的意識を持ってがんばることだと思います。当然、あくまでも娯楽として考えるのであれば、ただ楽しめばよいですが、スポーツ選手になりたいとか、eスポーツの選手になりたいとかいうハイレベルな目標があるのであれば、努力の方向性は考えた方が良いと思います。

頭が良くなる

副次的な効果にはなりますが、受験勉強の過程で当然勉強をするわけですから、合否に関わらず、頭がよくなる可能性は高いです。おそらく一生モノの宝となるでしょう。頭が良ければ色々とできるようになります。世の中、頭のいらないことなんてほとんど存在しないのですから。

中学受験のデメリット

難易度が高い

中学受験の難易度は非常に高いといって良いでしょう。基本的に、地元の公立の小学校のトップ数パーセントから十数パーセント程度の人が受験することになると思います。一クラス$30$人なら大体$3$人前後でしょうか。偏差値でいうと、偏差値$60$が大体上位$16$%に相当するので、最低でもそれくらいのレベルとなります(ただし、偏差値は母集団によって意味が変わってくるので、ここでいう偏差値$60$は、塾の模試での偏差値$60$などとはまったく異なります)。

すなわち、その時点でかなり上澄みの人たちとの勝負になります。したがって、特別な準備をしない限り、平均的な学力の人にとって受験は非常に難易度が高いです。

特に、難関校の入試問題は、対策しづらいというか、ただ積み上げてきただけでは太刀打ちしづらい問題が多いため、壁にぶち当たる可能性も非常に高いです。詳しくは、「偏差値58の壁」と検索すると色々と出てくると思います。

精神的な負担

地方の高校受験でよく聞く話ではありますが、中学までは地元の公立で一番だった人が、県内トップの高校に周りが優秀すぎてまったくトップに立てずに精神的に病むという話があります。

これと同様のことが、入学後に起こる可能性があります。すなわち、「小学校までは一番だったけど、中学では真ん中、下手したら下位」という風になる可能性があります。そうなったとして、別にメンタルに問題がない人であるならば良いのですが、かなり鬱になる人もいるでしょう。こればっかりは、個人差が大きいことであるので最終的にどうなるかはわかりませんが、そういった可能性があることは知っておいた方が良いと思います。

ただ、これは人生の中で、一度どころか何度も経験することになる可能性が高いので、中学受験においてだけ起きることではありません。

受験の注意事項

未来は分からない

しばしば、「○○中学に合格出来たら一生安泰」みたいな言説がありますが、実際はまったくそんなことはありません。その学校に合格できたとしてもその先上手くいかない可能性もありますし、その学校以外になったとしてもその先上手くいく可能性もあります。そもそも、残念ながら今上手くいっていたとしても、何年何十年と先も上手くいっているとは限りません。「常に勝ち続ける」ということは、非常に難しいことなのです。

いわゆる「エリートコース」の人の大きな勝負事のイベントとしては、小学校受験、中学受験、高校受験、大学受験、就活、出世競争などがあると思います。細かい勝負事も考えるのであれば、スポーツの大会とか期末テストとかも含まれるでしょう。このとき、こういった勝負事で勝ち続けるのは非常に難しいです。仮に勝率が$90$%であったとしても、$10$回行うと約$65$%の確率でどこかで$1$回は負けます。すなわち、「多くの人が、どこかで負けを経験している」ということは認識しておいた方が良いと思います。

何が最善だったのかは、結局のところわからないのです。仮に第一志望に受かって進学していたとして、第二志望以下に進学していた時よりも幸せになれるかはわかりません。逆に、第二志望以下の学校に進学したことで、一生の友達に出会える可能性もあります。また、中学受験で失敗した人が大学入試では上手くいったり、逆に、中学受験では上手くいったけど大学入試では上手くいかなくなることもあります。良くも悪くも、そんなに簡単に人生は決まりません。

「結果がすべて」ではない

大金がかかる以上なかなか難しいですが、結果がすべてにならないことが重要であると思います。すなわち、第一志望に落ちてしまったとしても、それがすべてではないということはよく認識しておく必要があります。

勝負事は「時の運」というものも関係します。たまたま得意な分野からたくさん出題されたとか、たまたま選択問題で適当に書いた答えがあっていたとかいうことは試験の性質上よくあります。出題範囲は決まっているとはいえ、出題範囲のすべてから出題することは試験時間上不可能ですし、選択問題なしですべて記述式というのも採点する側は大変なので、選択問題は今後もある程度は出続けるでしょう。したがって、上手くいかなかったからといって能力が足りていなかったかはわかりませんし、逆に上手くいっていたとしてもたまたまである可能性もあります。勝負事は良くも悪くもそういうものです。

以上より、まずは受験が終わったら努力と挑戦をほめるのが良いと思います。お世辞ならともかく、ほめられて嬉しくならない人はほとんどいないでしょう。

動機付けが重要

人間、何か行動を起こそうと思ったら、動機付けが重要となります。例えば、勉強が嫌いであっても、勉強することによるリターンが見込めるのであればやると思います。大人であれば、「TOEICで○○点取れたら昇進につながるからがんばろう」みたいな感じでしょうか。子供がこういった方向性でやる気を出すことは難しいかもしれませんが、ライバルに負けたくないとか、△△中学でやっていることに興味があるとかいうことでやる気を出す可能性は十分にあると思います。僕自身は、とにかく上を目指すということを考えて勉強をしていたような気がします。

子供に勉強をしてほしいと思ったら、強制するのではなく、何かしらの方法で動機付けしてあげることが良いと思います。受験校の学園祭に行ってみるのも良いかもしれません。

なお、この動機付けに関してより詳しく知りたい方は、僕の中高の同期であり、心理学を専門としているかまだ君の、『学生こそ必見、勉強の心理学』という記事をおすすめします。僕みたいな専門外の人間の話よりも、よっぽどためになると思います。

お金がかかる

受験にかかる費用

先ほど、「中学受験をするような学校は基本的に私立なので、通常よりもお金がかかる」というようなことを述べましたが、入学後だけでなく、受験勉強の過程でもかなりのお金がかかります。というのも、普通の学校の授業だけでは基本的に入試問題には太刀打ちできないからです。

最低でも、中学受験する人用の教材と過去問は必要になるでしょう。さらに、難関校を志望するのであれば、一般的な教員にあのレベルの問題を教えられるとも思えないので、何かしらの塾に通ったり、通信教育を利用する必要性が出てくると思います。そして、そういったところの学費は非常に高額なことが多いです。具体的には、大手の4大塾(日能研、四谷大塚、SAPIX、早稲田アカデミー)では、大体諸々全部合わせて、年間$100$万円はかかるという話を聞いたことがあります。これは、国立大学の年間の学費よりも余裕で高額です。僕自身は四谷大塚に$2$年ほど通っていましたが、実際、年間にこれくらいのお金はかかっていたと思います。普通の公立中学であれば勉強せずとも入学できますから、単純に考えて$100$万円余計にかかることになります。現実的に考えるならば、これだけの学費を掛ける以上は、それに見合ったリターンが出ないときついでしょう。$100$万円は非常に大金です。それくらいの出費がかかる可能性が高いということは、認識しておく必要があると思います。

受験で見込めるリターン

一方、長い目でみれば、受験によって得られるリターンの期待値は、そういった教育投資の費用よりも高いと思います。統計を見てみても、いわゆる高学歴の人の方が、平均年収よりも稼いでいることは多いですし、いわゆる一流企業に入社する人も高学歴の人が多いです。学歴は一般人にとって最高レベルの資格となり得ます。

そして、そういった高学歴な大学にはいる人はいわゆる進学校出身の人が多いです。特に、東大などはかなりの割合を中高一貫校出身者が占めています。単純に、ハイレベルな中高一貫校の生徒は、仮にその中でパッとしない成績であったとしても、多くの人が現実的に考えて志望校にするであろう大学には合格できるくらいの能力があるというメリットもあります。というのも、基本的に中高一貫校は進度が早いので、周りに合わせるだけでも全国的にみれば上位に食い込めます。一般の学校だと、なかなかこうはならないと思います。

したがって、将来的に普通にサラリーマンや公務員、大学でなければ取得出来ない資格の必要な仕事などを目指すのであれば、受験のリターンは大きいと思います。

おわりに

僕自身は、中学受験をする価値は大いにあると思います。挑戦すること自体にも価値がありますし。

ただ、やはり重要なのは子供本人の気持ちであると思います。子供を上手く動機付けして勉強に誘導するのは良いかもしれませんが、嫌がる子供に勉強を強制するようなことがないようにしましょう。むしろ、幸せとは逆の方向に向かってしまう可能性が高いです。「毒親」にならないように注意しましょう。

そして、親としては、結果よりも「努力したこと」を評価し、前向きな経験として受験を終えられるようサポートしていくことが重要だと思います。

仮に、本記事を読んでくださっている方のお子さんが中学受験をするのであれば、「良い受験勉強」となることを願っています。

最後に、宣伝にはなってしまいますが、ハイストは中学受験の社会にも役に立つと思うので、ぜひよろしくお願いいたします。
歴史カードゲームHi!story（ハイスト）の思い

ここまで読んでいただきありがとうございました。他の記事や本家のハイストの方もよろしくお願いいたします。