放課後のハイスト
年末時代劇スペシャル「忠臣蔵」から見る赤穂事件解説の巻

年末時代劇スペシャル「忠臣蔵」から見る赤穂事件解説の巻

投稿日: 2025年01月06日
最終更新日: 2025年01月06日
源さん源さん

はじめに

もうすぐ年末ですね。私は平成生まれなので知らないのですが、年末には特番の時代劇を見るという人も多かったそうです。2年前もそうだったな。今は時代劇といえば早朝ですね。

ちょうどハイストのカードを作るために見る機会があったのが……「忠臣蔵」です。時代劇の忠臣蔵はいくつか種類があるのですが、その中でも年末時代劇スペシャルという枠でやっていたものです。里見浩太朗さんが主演を務めたやつですね。

個人的に、中学受験の時も高校の時も赤穂事件を習ったんですけども、先生たちは赤穂事件ぐらい知ってるやろのノリで全然説明してくれなくて、なんでそれが起きたかの流れが分からないままだったんですよね。教科書読んでも、そんなに詳しく書いてないのでそれ以上、知りようがありませんでした。
今の若い人は全然知らないんじゃないかと思います。ジェネレーションギャップってやつかもしれませんね。

忠臣蔵、赤穂事件は流れが少し難しいように感じます。2年前のクリスマスにコロナにかかってしまった悲しい自分が楽しみに見ていた「暴れん坊将軍」とは異なりますね。あれは上様(徳川吉宗)や善良な市民に害なす存在がいて、それを上様とお付きの者が成敗していくという、大人が見るアンパンマンみたいな作品で面白いんですが、「忠臣蔵」はそんなに単純な話ではありません。

赤穂事件・忠臣蔵の解説

赤穂事件前段

たしかに単純に言えば仇討ちなんですが、完全に討つ側に大義名分があるような敵討ちではないんですよ。討つ側となる赤穂浪士は、主君や赤穂藩全体の誇りを守るために吉良義央を討つ訳なんですが、じゃあなんで仇討ちに至ったかというと、これが赤穂浪士たちの主君だった浅野内匠頭が江戸城内で吉良義央に斬りかかってしまったからなんですね。江戸城内でこのような刀傷沙汰を起こすのはご法度で、内匠頭は切腹させられてしまいます。

つまり行動だけ見れば、赤穂浪士は犯罪を犯した主君を讃え、吉良にトドメを刺しにいった……、このように見えてしまうわけです。これが赤穂事件をただ単に教科書や授業で習う人の限界です。

でも何らかの形で「忠臣蔵」を見れば、この見方は一気に変わります。もちろんこの赤穂浪士をお話として共感できるレベルまで脚色されているので、完全に鵜吞みにしてはいけませんが、一度見るぐらいなら悪くないでしょう。

まず、赤穂事件の全ての元凶となった浅野内匠頭による刀傷沙汰については、格式高い勅使をもてなす饗応役に任じられていた内匠頭が、先輩にあたる吉良にどのような作法で行うかを聞きにいったところ、噓や的外れなことを言ったり、そもそも答えなかったりして、嫌がらせされていたという経緯があったのです。氏素性も分からない所から泥臭く下剋上する時代は既に過ぎ去っており、武士は格式や家柄、誇りを守ることが第一義とされていましたから、このような嫌がらせをされて家の顔に泥を塗られるのはたまったものではなく、許されざる行為でした。

内匠頭は若く、情に厚いタイプでしたから、すぐにでも吉良を殺そうと思いましたが、そんなことをすれば自分だけでなく、家族や藩士たちが犯罪者の関係者というレッテル貼られて路頭に迷ってしまうため、必死に耐えていました。しかし、饗応の当日に、江戸城内の松の廊下で、吉良のせいで余計な苦労をさせられている中で、吉良に侮辱され、ついに内匠頭は抑えきれず、抜刀。吉良を斬りつけてしまったのです。

ここで吉良を討ち取れたら赤穂事件は起きなかったでしょう。惜しいかな、内匠頭は吉良の額をかすめただけで致命傷にはなりませんでした。

当然、江戸城内でのことですから、すぐに多くの人が駆けつけ、内匠頭は事情聴取されます。当時、こういうことをしても乱心だと言えば許されたと言われていますが、内匠頭は吉良がしてきたことを全て洗いざらい吐いた上で、乱心ではなく、己の意志で殺したと言いました。
結局、内匠頭は寂しい庭先で即時切腹を命じられます。赤穂藩も主君が切腹されてしまった以上、お取り潰し、働いていた藩士たちは事実上の解雇となってしまいます。
中には立て籠もって抵抗しようとする者もいましたが、大藩ではない赤穂藩がいくら抵抗したところで幕府に敵うはずもなく、無駄死にするだけです。
結局、赤穂藩士たちは改易を受け入れるしかありませんでした。

赤穂事件本編

赤穂事件はここから始まるんですよね。自分の主君への度重なる侮辱と、改易になってしまうような軽率さ、これを天秤にかけていくわけです。
赤穂藩には300人以上の藩士がいましたが、改易になってからは見限って出ていく人が続出。仇討ちを考えて残った人たちも、1年半も耐え忍ぶのは困難で脱退したり、家族が死んでしまったりして、どんどん減っていきます。

当時の武士は、よほど高位でもなければ帰農したり商いを始めたりして食っていくことはできた訳ですから、改易されたからといって武士階級にしがみつくために仇討ちなんかする必要はありませんでした。むしろ彼らの目的は他の所にあったように思います。

私はこの目的を、先ほどにも述べた通り、浪士たちの主君である内匠頭か、それとも内匠頭を散々侮辱した吉良義央か、どっちが正義なのかを示そうとしたんじゃないかな、と忠臣蔵を見ながら思いました。
やっぱり誇りあっての武士ですから、自分の属性にあたる主君に汚名を着せられたままでは大手を振って歩けないんじゃないかと思ったのです。

結局、この仇討ちは冬の寒い日に、47人の浪士が結集し、吉良邸に乗り込むことで果たされます。
赤穂浪士たちは吉良よりも浅野内匠頭、そして赤穂藩の方が正しかったのだと世間に認めさせることに成功したのです。

年末時代劇スペシャル「忠臣蔵」の面白さ

ここからは年末時代劇スペシャルの「忠臣蔵」の面白い所を紹介していきましょう。

やっぱり面白いのは導入の浅野内匠頭が切腹させられる所が終わってからでしょう。上にも書きましたが、ただ生きていくだけなら帰農なり商いなりをすればよく、もちろん再仕官の道もありました。その道を選ぶのか、それとも仇討ち路線を崩さないのか、ここで皆が悩みに悩むのが、やはり面白い。脱落者にもスポットが当たっているんですよね。

仇討ちを決めている者たちも、収入がない中、主人公の大石内蔵助を頼りに待ち続ける訳ですが、焦ってくる。この焦って、大石内蔵助に詰め寄っちゃうシーンも、緊迫した雰囲気が伝わってきます。

忠臣蔵って基本的に吉良を殺したら終わりなことも多いそうですが、年末時代劇スペシャル版では、この後に当時の将軍徳川綱吉の耳に入って、裁判の基準を見直すというシーンが差し込まれ、大石内蔵助が単に江戸時代あるあるな仇討ちをするのではなく、社会制度自体に訴えかけるような、深い内容にアレンジされています。ハイストの中だと荻生徂徠も出てきますね。赤穂事件自体、ちょうど綱吉期の話なのがよく分かります。

今こそ時代劇を見よう!

名誉か効率か……、転職も当たり前になってきた現代人なら、一年半も待たずにとっとと他の道を探す方が共感を得られそうですが、やっぱり自分や主君の名誉を重んじたり、自分の身で正義を証明したりと、古臭いようで、捨てるには惜しい、そんな精神が詰まっているように思いました。

「忠臣蔵」にハマらなかったら「暴れん坊将軍」を。時代劇、面白いですよ。Youtubeとかアニメ、ドラマの隙間に、マジで一度は見てほしいです。


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この記事を書いた人

源さん
源さん

どうも、源だ。ハイストでは、主に歴史系とイラスト生成系を担当しておるぞ。よろしくお頼み申す。

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