
ギャンブル大国・日本⁉
ギャンブルの起源
ギャンブルがいつどのようにして生まれたのかは明らかにされていませんが、骨などを用いた占いから転じて、かなり昔の時代に同時多発的に誕生したとされています。文献上では古代エジプト、古代ギリシャやローマ、古代中国といった場所ですでに人々や神々がギャンブルに興じる様子が記されています。
日本の賭博史
日本では日本書紀に賭博の様子が描かれていて、「盤双六」というバックギャモンのようなゲームが流行し牛や馬が賭けの対象となっていたとされています。
持統天皇は689年、双六に熱中して農作業などがおざなりになってしまうことを憂慮し双六禁止令を出しますが、完全に規制することは難しく、その後も賭博は増加していきます。
戦国時代には戦場へも手軽に持ち運べる賭け事として丁半博打(サイコロの出目が偶数か奇数かを当てるゲーム)などが流行、江戸時代になるとポルトガルからカルタが流入します。カルタも幾度となく規制の対象になりますが、法の穴をすり抜けるべく改造がなされ、その過程で誕生したのが花札です。これで外見上は賭博とはわかりづらくなりましたが幕府の目がある中堂々と遊ぶわけにもいかず、店の奥に賭博場が設置されるようになりました。このとき、鼻をこするしぐさをすることが賭博場へ案内してもらうときの合図だったとされています。
この頃、江戸幕府は初の公営ギャンブルである富くじ(=宝くじ)を開始します。しかし還元率が悪かったため、幕府の許可を得ずに設置された陰富(=違法富くじ)が横行し、最終的に富くじは廃止に追い込まれてしまいました。
明治期になると自由民権運動のさなか、政府は反政府運動の中核に少なからずいた博徒(賭博で生計を立てる者)を取り締まるため厳罰化を実行し、現行犯でなくとも逮捕できるようにします。この出来事は現在の「賭博をしている人≒反社会的な人物」といったイメージ形成の一因となったとされています。逆に言うと、それまでは罰されることはあってもかなり刑は軽いもので、賭博が遊戯として日本に根付いてきた様がうかがえます。
現在の市場規模
諸説ありますが、パチンコなどを含めると日本のギャンブル関連の市場規模は約29兆円とも言われ、世界第3位のギャンブル大国となっています。考えてみると街中に当たり前の顔をしてパチンコ店などの賭博施設が鎮座している状況は世界的に見ても珍しく、少なくとも私が知る範囲では見たことがありません。
戦後、1950年頃から数を増やし始めたパチンコ店は、技術革新により音や光の演出で興奮を持続させる仕組みを作ったり、戦略性・ゲーム性の向上やさまざまな媒体とのコラボを打ち出すことで人気を博し、日本独自の文化となりました。一方で海外で普及しない理由としては賭博に関連しうるものを輸出するのは厳しい規制がかかることが挙げられます。
日本人のこのような娯楽に関する熱情には目を見張るところがあります。いつの時代も法規制をかいくぐって遊戯を行っては進化させ、前述した丁半博打もすでに当時重心をいじったイカサマダイスが使用されていたといいます。江戸時代の寺社仏閣では参拝客を長期に留めるため花街や富突を整備したとされ、そう考えるとむしろ最近の統合型リゾート建設の議論は伝統的な景気刺激策といえるのかもしれません。
このように日本では伝統的にギャンブル関連の市場が栄えてきた(より楽しくなるように進化させてきた)歴史があります。ここからは、なぜギャンブルが楽しくてやめられないものなのかについて説明していきます。
なぜやめられないのか?
ヒトがギャンブルに依存していく過程には、脳の報酬系が大きく関わっています。
報酬系は快楽や幸福をつかさどる神経系で、報酬が得られた・得られそうな場面で活性化します。例えばスポーツの試合で勝利した、プロジェクトを成功させたなど、成功・達成によりドーパミンが放出され、さらなる意欲やモチベーションの向上(成功により報酬がもらえると学習し、行動を強化)につながります。
ここで予期せぬ幸運に恵まれたり、報酬を期待する状態が続くと、もうドーパミン溢れっぱなしです。脳はこの状況を報酬と認識して強化学習を行うのでさらにのめり込むことになります。また、強い刺激にさらされ続けたことで報酬系が麻痺し始めるとちょっとの快楽では満足できない状態になり、よりリスクの高い賭けを欲する身体になってしまいます。
つまり、
賭ける
↓
当たりそう
(*実際には当たっていなくても報酬系は活性化する)
↓
賭ける
↓
たまに当たる
↓
再び賭ける
という無限ループに陥っていくわけです。人間には損失回避のバイアスが存在しており、同額なら利得による喜びよりも損失による悲しみの方が2倍強く感じるとされています。「このままでは損をしてしまう」という状況を回避するため、「もう少し賭ければ取り返せるかもしれない」という心理が働き、どんどん消費額が増えていきます。
これと似たようなものにコンコルド効果というものがあります。これは「そのまま続けても損にしかならないことに対して、今までの投資や努力がむだになってしまう、もったいない、とさらに労力をつぎ込んでしまう」心理状態のことをいいます。簡単な例だと、とてもつまらない映画でも入場料数千円を無駄にしまいと最後まで観てしまった、といった状態です。
いずれにせよ、このような「報酬系」と「損失回避」の仕組みによりギャンブル依存は簡単に発生します。関わらないことが一番ではありますが、せめて仕組みを理解し自制できるようになりましょう。
ギャンブルの違法性
ただそもそも、現在日本において賭博は違法です。金品を賭けた偶然性のあるゲームは怠惰で浪費な習慣を生み、勤労の意欲をそぐため法律で犯罪と定められています(勤労は義務のため)。なので野球賭博や裏カジノにとどまらず、厳密には友人間で行う賭け麻雀のようなものであっても(通報があれば)賭博罪が成立します。
一方で、競馬や競艇、宝くじといった公営ギャンブルは合法です。例えば競馬は、馬の改良増殖その他畜産の振興に寄与するとともに、地方財政の改善を図るものとして競馬法によって定められており、特別に許可が出されています。
なお、パチンコ店に関しては三店方式という特殊な営業形態によって、公営ギャンブルではないものの黙認されている状態です。ここでいう「三店」とはパチンコ店・景品交換所・景品問屋の3つのことで、
まずパチンコ店が価値の低い景品を客に渡す
↓
客は、たまたまパチンコ店の近くにあった景品交換所に行き、景品を買い取ってもらう
↓
景品問屋は景品交換所から景品を買い取り、パチンコ店に卸す
といった流れで「パチンコ店で客がお金を賭けて金品を得た」という違法な状況を回避(?)しています。最終的に客は現金を手にしているので違法と言えなくはないのもまた事実なのですが。
オンラインカジノ問題
最近話題となっているオンラインカジノ問題。では、オンラインカジノ問題のどこが問題なのかというと、やはりそもそも日本で賭博は違法という点にあります。
それがアクセスしやすい状態でオンライン上に存在していると、違法だということを知らずに始めてしまう人が出てきてしまいます。実際最近摘発されたニュースでも、「違法だということを知らなかった」という声が多く聞かれます。
特に海外ではこうしたサイトが合法的に運営されている場合もありますが、日本国内からお金を賭けた時点で日本の法律の管轄内になるため、どう頑張っても違法になってしまいます。
サイトへのアクセス制限が緩い日本がターゲットになっている実情もあり、まずはそういったサイトが表示されないよう事業者側への処分や規制が必要となってきています。
また、閉店時間が存在するパチンコ店などと違ってオンラインカジノは24時間賭博が可能であり、しかもデジタルな賭博のためお金を賭けている実感が少なく、ギャンブルの沼にはまりやすいという危険性があります。気づいたときには損失が膨れ上がっていて自分では手に負えなくなってしまう、ということになりかねない危険性からも、オンラインカジノは控えるべきだといえるでしょう。
おわりに
ここまで、日本でギャンブルの市場が発展してきた実情や依存してしまう仕組みについて解説してきました。
やはり日本人が娯楽にかける熱情は凄まじいのでどの遊戯もより楽しく発達してきています。しかし、依存しすぎて破産に向かってしまったり、違法賭博でお縄にかかるなんてことがあってしまえば元も子もありません。
例えば日本中央競馬会のホームページでは、「馬券は正規の窓口で」「馬券は20歳になってから」「ほどよく楽しむ大人の遊び」と健全な遊び方を呼び掛けています。
特に大学生だと初めてこういったギャンブルに触れてハマる人も多いと思いますが、節度を守って程よく楽しむことが業界の健全な発展及び自分の身を守ることにつながるので、本記事が少しでも学びになれば幸いです。
ありがとうございました。

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