放課後のハイスト
学科紹介 ~東大・文学部心理編~

学科紹介 ~東大・文学部心理編~

投稿日: 2024年12月09日
最終更新日: 2024年12月17日
かまだかまだ

はじめに

この記事では、ハイストメンバーの現在通っている大学の学部・学科について簡単に紹介していきます。今後シリーズ化していく予定なのでぜひ大学や学部選びの参考にしてみてください。

今回紹介するのは、
東京大学 文学部人文学科 心理学専修課程
です!

東大は2年の前期(Sセメスター)までは全員が前期教養学部所属で、「進振り」という名の学部振り分けを経て学部所属となるのですが、詳しい話はまた別の機会に。

心理学とは?


では、そもそも心理学とは何なのでしょうか?
東大の心理学研究室によると、

「心理学は人間の心的、知的な機能を探求するそれ自体独立した基礎的な学問である。また、一方で「こころ」とは何かということを考えると哲学と関わらなければならない。生物学的な諸領域、医学とも密接に関連している。さらに電子工学、情報工学など人間の使う機械を作り、また、人間の機能を代行する機械を作ろうとする領域とも関わっている。本研究室ではこうした幅広い領域に関わる心理学という学問を実験という実証的な手法で取り組む学風を持っており、知覚・注意・記憶・思考などの心理現象を精神物理学的手法・神経科学的手法・認知科学的手法によって研究している。また、文化認識や科学方法論などについても研究を行っている」

とあります。要するに、人間の思考や行動の特徴について研究する学問です。

よく「心理学」というとテレビでよく見るメンタリズムを思い浮かべる方も多いと思います。しかし、あれは心理学や行動科学などを応用していることに間違いはないのですがパフォーマンスの面が強くて、学問としての心理学とは一線を画すと考えていただきたいです。

東大の心理学系学科

さて、私が所属している文学部の心理学専修課程ですが、名前の通り広く心理学について扱う場所となっています。

というのも、東大で心理学を扱っている場所は他にもいくつかあって、

文学部 人文学科 社会心理学専修課程
  (集団の中の人間の心理学)

教育学部 総合教育科学科 心身発達科学専修 教育心理学コース
  (学習や発達に関する心理学)

教養学部 統合自然科学科 認知行動科学コース
  (心理学全般を理系的側面から扱う)

といった種類があるのですが、私はぼんやりと運動や学習に関する心理学に興味があったものの広く様々な分野について学びたいと考えていたため、扱っている範囲の広い文学部心理に進学しました。

文学部心理には4つのゼミがあり、それぞれ主に
・運動学習
・社会的認知
・視覚を主とした知覚心理
・認知心理学

について研究を行っています。

私自身は運動学習がメインのゼミに所属しています。運動学習、という言葉だけ見てもピンとこないと思うので、最近読んだ論文から内容の一部を紹介します。

論文紹介

マウスを用いてドットを動かし、画面上の十字にできるだけ多く触れる課題があります。

そこには4つのブロックがあり、最初のブロックでドットはマウスを動かした方向から+90°の方向に動く(つまり、マウスを真上に動かした場合ドットは真右に動く)とします。

2つ目のブロックでは-90°の方向、3つ目では+90°、4つ目では-90°の方向に動くとします。

すると、同一ブロック内では徐々に成績が向上します(適応運動学習)。しかし、1ブロック目の最後の試行と3ブロック目の最初の試行を比べると、3ブロック目の最初の試行の方が成績は悪くなっています。これは、2ブロック目に逆方向の順応が行われたため、1ブロック目での順応が打ち消されたことを意味します。

また、1ブロック目の最初の試行と3ブロック目の最初の試行を比べた場合、3ブロック目の方が成績は良くなっており、順応がある程度は保存されることも分かりました。

引用
Perception and control: individual difference in the sense of agency is associated with learnability in sensorimotor adaptation (Wen, Ishii, Ohata, Yamashita, Asama & Imamizu (2021))

このような論文を和訳しパワポにまとめて発表、というのがゼミの大まかな流れになっています。1セメスターで1人1本の論文について発表を行います。

心理学と統計

ここまで、文学部心理について論文の一部なども交えながら紹介してきました。論文の内容を見てもしかしたら気づいた方もいるかもしれませんが、実は、

かなり理系色が強いです。

文学部だから数字には触れなさそう、なんて考えは捨ててください。理系からの進学者も多く、論文では必ずと言っていいほど意味の分からない数式が登場します。

また、心理学を専攻するにあたって切っても切り離せないのが「統計」です。

心理学は多くの人間に対して普遍的な内容について扱うため、研究においてある程度のサンプルサイズが必要となります。そして、条件間で差が有意にあるかどうかを計算・検証する必要性があるのです。

進学するとまず統計手法の勉強から始まり、ExcelRJASPといった統計ソフトの使い方を学びます。ここで苦戦する人が多いですが、同期で助け合いながら何とかこなしている印象です。

おわりに

いかがだったでしょうか?普段思っている心理学とのギャップが結構あったのではないでしょうか。文学部心理では、運動学習のみならず、幅広い分野について研究を行うことが可能です。これを読んで少しでも学問としての心理学に興味を持っていただけたら嬉しいです。


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この記事を書いた人

かまだ
かまだ

「放課後のハイスト」編集担当。専攻は心理学です。

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